愛のワインは恭しく

私が愛したお酒たち

特売でワインを2本

このところ、ジュピターで特売をやっている。コーヒーが半額だったり、ワインが安くなっていたりする。あまり買いだめをしない性質なのだが、つい普段は買わないモカ・マタリを200グラム買ってしまった。もちろん、ワインも2本買った。どちらも1200円ほどのものが、880円だったと思う。1本は「GOVERNO」と書いてあるイタリア・ヴェネト州の赤。もう1本は「LOVE」と書いてある、これも同じくヴェネト州の赤。

GOVERNOは、濃い、しっかりした味わいで、私好みだった。勘が働いて、好みに当たると、うれしい。それが安くなっているので、さらにうれしい。単純な男である。問題は「LOVE」だ。そもそも私は、見た目で勝負している(と思われる)ワインを避けている。その点からしても、またストレートすぎる名前にしても、本来なら手を出さないはずなのだが、安さにひかれてつい買い物かごに入れてしまったのだ。

シェイクスピアをディスってしまった

ラベルを読む。英語である。“When I saw you I fell in love, and you smiled because you knew”“If you will die for me, I will die for you” 直訳するのも恥ずかしいが、「あなたに会って、私は恋に落ちた。あなたはわかってくれて、ほほ笑んだ」「あなたが私のために死ぬのなら、私もあなたのために死ぬ」。何だか、中学生の稚拙な恋文みたいではないか、と思う。だが、W.S.という頭文字に気づいて、もしや…と思い、ボトルにかけてある小さなカードを開いてみると、やはりウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のセリフとあるではないか。ああ、大文豪をディスってしまった。このワインメーカーはロミオとジュリエットの舞台となった地元の歴史をリスペクトしており、この愛の悲劇にちなんで「LOVE」とつけたのだという。こうなると、恭しく飲むほかあるまい。

しっとりした舌触り、芳醇な香り、ほのかな甘みとしっかりしたボディ、シェイクスピアの名に恥じません。ちなみに今『ロミオとジュリエット』(中野好夫訳)に、ざっと目を通したのだが、それらしい訳の個所が見当たらない。ただ、最初の一文はネット上でシェイクスピアの言葉として、次のように訳されていた。君を一目見た途端に恋に落ちた、そして君はそれを知ってて微笑んだんだ そして「死ぬ」の方は、ネット上でリチャード・ブローティガンの詩「ロミオとジュリエット」の一節として、掲載されていた。興味のある方は下記をどうぞ。この詩は明らかにジョークを楽しんでいるので、やはり「死ぬ」のセリフも、原作のどこかにあるのだろう。http://kabenoshi.blogspot.com/2012/07/blog-post_8574.html

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