Good  Bye , Darwin! (グッバイ、ダーウィン!)

ダーウィンの店内に貼られていた閉店のお知らせ 酒場物語
ダーウィンの店内に貼られていた閉店のお知らせ

毎日が週末のように

2022年6月24日、札幌駅の高架下にあったブリティッシュパブ「Darwin(ダーウィン)」がクローズした。新幹線延伸に伴う工事で、契約の更新ができなかったためである。サツエキブリッジと呼ばれるあの高架下の店はいずれも、順次、閉店になるらしい。

 ダーウィンはススキノの真ん中にある「St. John’s Wood(セントジョンズウッド、通称セント)」の姉妹店だった。私はもともとセントの常連だったのだが、札幌駅を経由する時はダーウィンに顔を出していた。コロナ禍でススキノから足が遠のき、最近はもっぱらこの店だったので、寂しさは隠せない。

 それはどの常連客も同じで、閉店前の1週間は早い時間から混んでいた。平日の5時に行っても、けっこうカウンターが混んでいた。O店長は「この1週間は毎日が週末みたいですよ」と、複雑な笑顔だった。

歴史の始まり

閉店の翌日、4時から常連客のみの貸し切り宴会(?)があった。食べ物はなく、在庫が残っているビール、ウィスキー、カクテル程度しか飲めなかったが、大盛況。常連が持ち込んだお菓子やピザ(今日は来られないからと、わざわざ宅配で届けてくれた人がいた)などをつまみに飲んでいる人も多い。私は仕事があって9時近くに行ったのだが、イスには座れず、奥のカウンターの前で立ち飲みをしていた(カウンターの椅子はすべて取り払われていた)。

 誰と話すともなく、にぎやかな店内をぼんやり見渡していると、この店で交わした会話がとりとめもなく脳裏に浮かぶ。一度は、健康保険制度をなくした方がいいという医者と議論になったこともあった。アメリカ人女性のHさんとは、ブコウスキーの話もしたなあ。

スタッフの若者が声をかけてくれた。ここでバイトを始めて半年ほどの大学4年生。「来年は就職?」と聞くと、「役者になります」と言う。別なスタッフは「移転先が決まるまで仕事はせず、O店長についていきます」とのこと。女性バーテンダーのSさんは系列店に移るが「週末はススキノのあるバーで、メスカルとテキーラのイベントをやります」。

 O店長は「しばらく後片付けをして、その後はテナント探しです」。夜は更けたが、帰る客はあまりいない。私もビール2杯のつもりが、4杯になってしまった。11時過ぎになって、スタッフの一人ひとりとハイタッチし、最後にO店長とハグし(前日もしたのだが)、店を出た。

一つの歴史の終わりは、新しい歴史の新しい始まりでもある。Good  Bye ,  Darwin!

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