蕎麦屋で昼酒 香季清流庵(札幌)の巻

冷たい蕎麦の上に大きなねぎの天ぷらが載っている。 昼酒の記
ある日に食べた清流庵の「ねぎ天おろし蕎麦」。天ぷらの下に大根おろし、刻みのり、削り節、蕎麦が隠れている。日本酒は喜久酔の本醸造。

午後2時から貸し切りで

 先日、旧知の3人で飲もうという話になった。Hさんは40代後半、Kさんは50歳過ぎ、そして私(還暦)である。最後にこのメンバーで飲んだのは、どうやら某有名家具ブランドの某事務所でのことらしい。「らしい」というのは、その場所や飲んだ様子の記憶はあるのに、いつのことだかまったく思い出せないからである。たぶん2年、もしかしたら3年前かもしれない。記憶力の衰えは目を覆うばかりで、年は取りたくないものである。
 さて、私たちは3人とも蕎麦好きであり、かつ昼酒に抵抗がない。ならば、私の要望(我儘といってもいい)を聞いてくれる「香季清流庵」にしようということで話が決まった。この店、昼の営業は午後2時までであるが、事前に打ち合わせをすれば、2時から貸し切りで飲めるのである。ただし、店主一人の店で、かつ夜の営業もあるため、2時間でお開きにするのがルールだ。

今日は喜久酔の本醸造


天ぷらを頼み、揚がるのを待ちながら別なつまみでビール。この店は蕎麦もいいが、天ぷらもいい。さっくりと揚げ、海老も野菜も実にジューシーなのだ。Hさんが『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』に、感銘を受けたという。私の買いそびれていた本である。よし、忘れずに読もう。
天ぷらとだし巻き卵を前に、日本酒に移る。以前、日本酒のラインナップを見て、「もしや、七蔵さんから仕入れています?」と店主に聞いたら、その通りだった。私は「よかったら、喜久酔の本醸造も入れてよ。私の好みなんだ」と、無理なお願いをしたら、その通りにしてくれた。当然、その日は私のお薦め(私にも少しは責任感がある)の喜久酔を冷やで飲む。
Kさんが「これはいい辛口ですね。食事に飲む酒としてぴったりだ」とほめてくれた。はい、そうなんです。純米大吟醸のような「香り高く、ほのかに甘く、適度な酸味もあり、米のうまみがしっかり感じられて、かつ舌と鼻孔に心地よい余韻が残り、やがて静かに消えていく…」的な酒は、それそのものを味わうには適しているものの、食中酒としてはかえってふさわしくないと思う。いわゆる淡麗辛口こそ、食を引き立て、酔い心地を楽しむ酒なのだ。普段使いであるからには、もちろん懐にやさしい価格であることも、大事な要素である。
〆のせいろは十割、二八、更科と三者三様で頼んだが、どれもいい。午後4時、店を出ると、まだ陽は高い。私たちは当然のように、2軒目を目指して歩き始めた。

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