百均のスリーセブン

日々のかけら

 仕事場で使う文房具や水回りの品を買いに、近所の百円均一の店に行く。その店はスーパーの二階にあり、ついでにビールを買うにも都合がいい。その日はカッターマットが必要だった。今までカッターの使用頻度が少なかったので、下に厚い紙を敷いて代用していたのだが、最近よく使うようになり、さすがに使いづらいと思い始めたのだ。B4のカッターマットは300円だった。ほかにも新しいカッターなどを買い物かごに入れた。レジの前には数人の列があった。私が並ぶと、レジ係が何かのボタンを操作したのだろう、もう一人の女性が空いているレジに小走りに走ってきた。
「お待たせしました。次にお待ちの方、どうぞ」
 お決まりのセリフに誘導されて、私の前の女性、そして私がそのレジに並ぶ。前の女性はちょっと動作が遅く、なかなか支払いが終わらない。レジの女性が少しイライラしているのがわかる。彼女はさっき、棚に商品を並べていた。中年以上のスタッフが多いこの店で、例外的に若い。まだ20代前半に見える。彼女の全身からけだるさ、あるいは日々のやりきれなさがかすかに伝わってくる。疲れを見せていなければ、整った顔立ちは若さも相まって魅力的なのに、と思う。私の順番になった。
「レジ袋、一番大きいのをください」
 彼女はB4のカッターマットを見て、ちょっと考えてから言った。
「この大きさならMサイズの袋でも入りますが、Lでいいですか」
「うーん、Lでいいよ」
 私は一度決めたことを変えるのが苦手、と言うか億劫なのだ。あるいはこんなところにも、性格の頑なさが顔を出しているのかもしれない。
 彼女は商品を読み取って(770円だった)、最後にレジ袋の金額を加えた。
「777円になります」
「スリーセブンだね」
「ええ、スリーセブン」
 ほんの一瞬だが、彼女は年頃にふさわしい生気のある微笑を浮かべた。

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