そのひとことが言えなくて

酒のみの健康術

右の腎臓に影が

少し前のことだが、ちょっとした会食の席である女性と話をした。その人に「この近所で、かかりつけ医になってくれるような、いい病院を知りませんか」と聞かれた。私はある内科医院に行くことに決めているので、「歩いて20分ほどのところにある××医院の女医さんは、ていねいに診てくれますよ」と答えた。すると、その女性、「あら、公園の向かいにある医院ですよね」と、知っていた。

私は去年、その病院で大腸カメラ、胃カメラの検査を受けた。その際、女医さんが「エコーも撮りますか」と聞いてくれたので、「お願いします」と答えた。すると、「右の腎臓に影がありますね」とのこと。その後の診察で、画像を見ながら、「胃も大腸もきれいです。でも、右の腎臓に3センチの腫瘍が疑われます。精密検査を受けてください」と言われてしまった。つまり、腎臓がんの疑いである。

私は紹介状を書いてもらい、1か月後にある大病院で検査を受けた。専門医が最初にエコーを撮りながら、「どちらの腎臓に腫瘍と言われました?」と聞く。紹介状に書いてあるはずだろうと思いながら、「右です」と答えると、「そうだよねえ。でも、なんともないなあ。CTの予約が入っているので、念のため受けますか?」とさらに聞かれたので、もちろん受けた。で、結果の告知。「右の腎臓の形が悪いだけですね。血液検査、尿検査の結果も問題ありません。安心してください」とのこと。

エコーの診方を言うべきか

 女医さんは、エコーを私のおなかにあてて映像を見ていたが、専門医によると、「腎臓は背中から撮影する」ものらしい。おなか側から見ると、形によってはその一部が影に見えるそうだ。…というようなことを、かいつまんで、会食した女性に話した。すると彼女も、「じつはうちの息子も、その女医さんに腎臓の精密検査と言われて。心配しました。でも、なんともなかったんですよ」とおっしゃるではないか。同じ経験をしたのである。

 しかし、私はその後も、何かあると、その女医さんに診ていただいている。医者は心配性なくらいがいいと思うからだ。ただ、その女医さんに「腎臓のエコーは背中側から診るものだそうです」と、言ったものかどうか、いまだに迷っている。たぶん、言うことはないだろうな。
腎がんを告げるバリトン窓若葉
その当時、思わず詠んだ拙句。女医さんの声はアルトだったけれど。

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