息子からの贈り物

私が愛したお酒たち

ススキの美

先日、ちょっと郊外にドライブしたら、道端にはもうススキの穂が揺れていた。忍び足で訪れた秋は、突然駆け足になったようだ。思いついたことがあって、2,3本、ススキを頂戴してきた。ちょっと飾ろうと思ったのである。ふだんはあまり、こんなことは考えないのだが、実は先日、息子が旅先から送ってくれた日本酒がある。

花瓶にさして、あれこれ工夫したが、今一つ、写真の納まりが悪い。やむなく、花瓶から外して背景としたが、ススキの良さが消えてしまった。それはそうだろう、ススキはあの細さに美があるのだから。よほど背景がしっかりしているとか、取り合わせがうまくないと、すらりとした曲線が生きないのだろう。
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
こんな俳句が中学か高校の国語の教科書にあった。この一句、すべてひらがなで書くにふさわしい。

父と息子の間

さて、日本酒は「宗玄 大吟醸」と「加賀鳶 純米大吟醸」。宗玄は初めて飲む酒だったが、優美で繊細、キレもあり、実にきれいな酒だった。加賀鳶は強さがあり、こちらもいい。どちらも食中酒にするには惜しく、何も食べずにそのまま静かに口に含んでしみじみ味わった。息子からの贈り物が、こんなにもいいものとは知らなかった。息子と二人で酌み交わす以上に、酔ってしまった気がする。

そういえば、私の父がとても喜んでくれたらしい(人づてに聞いたのだが)ことがあった。同居を始めたころ、確か父が73歳くらいの時、二人だけで温泉旅館に泊まったこと。登別だったか白老だったかにあるこぢんまりとした宿で、そう高級でもなかった。夏の終わりの閑散期で、ほかに客がいなかったせいもあり、のんびりと風呂につかり、落ち着いて食事ができた。新鮮な海の幸でビールを飲み、日本酒も飲んだ。翌日は観光をほとんどせず、家族にちょっとお土産を買って帰った。ただそれだけのことである。父と二人だけで旅行をしたのは、その時を含めて、人生で二度だけだった。

私は息子と二人だけで何回か泊りがけの旅行をしている。記憶に残っているのは、まだ高校生だった息子を連れて、サケ釣りに行ったこと。キャンプ場のバンガローに泊まったのだが、反抗期まっさかりの息子が、車から荷物を降ろしたり、運んだり、きびきびと手伝ってくれた。大吟醸はそんなことも思い出させてくれた。

コメント

Translate »