海を見ながら「きりんざん」(麒麟山酒造、新潟)

私が愛したお酒たち

北海道に夏が来た。夏と言えば、海。そしてウニ。となれば、積丹半島へ行く人もいるだろうということで、お気に入りの宿と酒の話です。

積丹半島の西側にある神恵内村は人口850人、北海道で二番目に小さい村。当然、宿泊施設も限られているのだが、その一つ、「民宿きのえ荘」は、酒も魚も心に残る宿だった。客室はごく普通の和室、トイレや洗面所、冷蔵庫は共同だが、漁港直送の新鮮な魚介類と、種類豊富な地酒は「また来たい」と思わせるに十分だった。

私が訪れたのは3月の下旬、魚がうまくなるのはこれからという季節だった。それでもマイカ、タコ、ツブ貝、赤ガレイ、タラの昆布締めと、造りはすべて旬の地魚だ。10種類ほどあった地酒の中から選んだのは、麒麟山酒造の「きりんざん 純米」。通称「グリーンボトル」というらしい。

きりりと冷えたのを飲んだ。舌触りに軽やかなふくらみがあり、女性的な優しい香りを感じる。ほどよいコクと上品な甘みが、飲み飽きさせない。私としては、もう少し辛口が好みだが、旅の一杯としては新鮮な感じがして、うれしい。食中酒としても、特に白身魚などによく合う気がする。日本酒好きでチャーミングな女将との会話も弾んだ。ちなみにご主人はワイン派らしく、ワイン(特に道産)のラインナップもいい。

「きのえ荘」は海を見下ろす高台に建つ。夕暮れ時、食事処から見る日本海に沈む夕日が美しい。カップルで来れば、ロマンティックな気分も楽しめそうだ。もっとも私は、この酒と景色があれば、一人で十分なのだが。

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