夏酒は青春の香り

私が愛したお酒たち

ススキノで地酒を楽しむ「酒遊会」

夏酒には青春の香りがする。先日ススキノで、「酒遊会」という日本酒を楽しむ会に初参加して、そんなことを思った。この会はすでに11回となり、70名ほどの人が参加。いつも地酒を買いに行く七蔵さんがお酒を提供している、盛大な会だ。司会は七蔵の店長さん。特別ゲストは上川大雪酒造の杜氏、川端慎治さんだ。

上川大雪酒造の川端杜氏に再会。「あれ(以前、雑誌に書いた記事)は、いかにも酒好きが書いた文章ですね」とにっこり。

乾杯は川端さんの発声で、上川大雪酒造の特別純米酒「吟風」をくいっと。吟醸酒を思わせる、上品ないい酒である。この日、同酒造からは4種類。なかでも、スペシャルで提供された純米大吟醸「きたしずく」が絶品。35%まで精米した、清冽な香りと舌触り。それでいてしなやかさ、ふくよかさもしっかりとある。小売りはしていないと知ると、いっそううまくなるような。そのほかの2種は、特別純米酒「彗星」と純米吟醸「きたしずく」。

終わった青春を振り返る酒

カウンターに7社の酒造から7種類の酒が並び、自分で注いでもらいに行くスタイル。町田酒造の「夏純うすにごり純米吟醸雄町」と、天明の「初夏の夏セメブレンド」、そしていづみ橋の「夏ヤゴブルー純米生原酒」に、とりわけ夏を感じた。ほの甘く、さわやかで、ちょっと切ないこの感覚がいい。ほかには常山の「純米吟醸ひとつ火 蛍」、やまとしずくの「純米 夏のヤマト」、丹沢山の「純米原酒」、山陰東郷の「炭酸割専用」が並んでいた。丹沢山は、飲みそこねてしまった。残念。山陰東郷は炭酸で割って飲むのだが、蒸留酒の香りを感じる珍しい酒。甘さはわずか。これはこれで楽しめた。

ところで、坂口安吾だったと思うが、「青春を振り返るのは、ノスタルジーに浸ること。青春は終わってしまえば、切なくもあるが、甘く美しい。しかし、私の青春は終わらないのだ。そのために肉体は老いてきているのに、心はいつまでも若さゆえの痛みを感じ続けており、辛くて仕方がない」というようなことを随筆に書いていた。

夏酒は女性に人気が高いそうだ。しかし、人生の第四コーナーに差しかかり、終わった青春を振り返る、くたびれかけた私のような男にこそ、いっそう味わい深いのかもしれない。

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