小樽・海辺のカフェ、待つ時間

旅のかけら

海辺のカフェを探して小樽へ

目覚めたら、心地よい風が窓から吹き込んできた。青空が抜けるように高く、雲が輝いている。北海道の六月には、時おり楽園のような朝がある。

ドライブに行こう。ハンドルを握り、小樽方面へ。銭函駅の向かいにある「しろくまコーヒー銭函店」に着いたのは、11時ちょうど。ドアを開けると、一番乗りだった。

店の奥は海に面したテラス。パラソルがつくる日影に腰を下ろす。10分ほどして、注文したものができたと、若いスタッフが呼ぶ。テラスまで来て告げるくらいなら、運んでくれればいいのだが。ベーコンホッサンドとアイスカフェラテのセット。

優しい手が肌を撫でるように、潮風がゆっくりとすり抜けていく。私が腰を下ろしてすぐ、若い女性が一人、雑誌を抱えて来た。ブルーのワンピースに白い帽子、休日らしいお洒落な身なりだ。年のころは20代半ば、私の娘と同じくらいだろう。彼女は海を正面に見据えるベンチに腰を下ろした。

待つことを覚える

8年近く離れて暮らした娘は、去年の秋から東京で働いている。月に一度か二度、LINEでやり取りする。苦労しているのだろう。ちらりと弱音が見えるようなことを書いてくることもある。土日の休みには根を詰めて勉強しているらしく、海の見えるテラスで過ごす時間などおそらくあるまい。娘が今、私の隣にいたら、どんなに楽しいことだろうか。

歳をとるといいことが、一つだけある。待つのを覚えることだ。娘は待つことなく、進んでいく。私は娘が進んでいくのを待っている。そして、いつか私の隣に来るのを。

こちらも海の話題。

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