松浦武四郎の生家を訪ねる
コロナ禍の拡大が急である。普段はさして気にしない私も、今回はびくびくしている。師匠と先日(11月の初旬だった)飲みに行った日も、「ススキノに出ますか」と尋ねたほどだ。師匠曰く「南2条の店だから、いいだろう」。ススキノの警戒地区は南3条以南なのだ。ということで、おでんの柳1軒に12時近くまでいた。これほど(?)警戒心を高めているにもかかわらず、今回はGoToトラベルで行った旅行の話で、ちょっと申し訳ない。
まださほど感染拡大はしていなかった10月末、三重に旅をした。中部空港行きの飛行機は満席である。レンタカーで松阪市にある松浦武四郎記念館を訪ねた。小野江町という町にあるのだが、記念館はその地区の会館の一部を使用している。武四郎、やや扱いが軽い気がする。が、受付の女性は「どちらから?」と気軽に訪ねてくれ、「北海道です」と言うと、「まあ、遠いところから」と喜んでくれた。普段、何かと目にする武四郎の事績を彼の故郷で見るのは、楽しいものだった。
記念館から徒歩10分ほどのところに、彼の生家が残っている。伊勢参りの街道沿いに位置する庄屋だったという。立派な屋敷で、客用の離れまである。ご案内していただいたボランティアの方によれば、「幕末から明治初期、武四郎の知り合いがよくここを訪ねてきたので、家督を継いだ彼の兄が、建てたものです」とのこと。「ここにも、あそこにも、手紙が貼ってあったらしいのです」と板戸の裏を見せてくれた。どうやら訪れた人々が記念に書いた色紙や手紙の類を、無造作に張り付け、何かの機会にはがしてしまったらしい。うっすらと残る跡は、英語に見えるものもあった。実にもったいないことである。すべて保存していたら、武四郎の交友関係や評価もわかっただろうと残念でならない。
地域クーポンで知る感慨
その日は松阪市内のビジネスホテルに泊まり、地域クーポンが使える焼き肉屋へ。地元では安いので有名な店らしい。「松阪牛A5ランク」セット(1人前5000円ほど)を注文。人生初の松阪牛である。期待に胸の高まりも抑えきれない。が、ヒレ肉をひと口食べて感じたのは、「とろけすぎる」ということだった。肉の味がしっかり感じられない。カルビはさらにとろとろ。そういえば若いころ読んだ記事の中に、「箸でちぎれるほど柔らかい松阪牛を、溜まり醤油で食べるのが通だ」と、書いてあったっけ。つまり、肉の大トロなのだ。悲しいことに、もうそれがおいしい年ではないのである。残りの人生、牛肉なしでもいけそうな気さえする。地域クーポンで味わったのは、松阪牛の感動ではなく、自分の年齢への感慨であった。
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