まるで海上洞窟「石崎漁港トンネル」(上ノ国町)

旅のかけら

岬の一部にトンネルを掘った

あまり期待していなかったのに、行ってみると、「これはいい」と思う光景が時々ある(もちろん、その反対のケースはよくある)。この春に訪れた上ノ国町の石崎漁港が、まさにそうだった。辺鄙な場所の小さな漁港だが、ここには「船のトンネル」(正式には石崎漁港トンネル)と呼ばれている、海上トンネルがあるのだ。ただし、現在は使われていない。

そもそも海上トンネル(この言い方が正しいのかどうかも、わからないが)という言葉に、「?」と思う人も多いに違いない。海に突き出た岬の一部にトンネルを通し、外海側から内海側へ、船が通れるようにしたものだ。何のためかと言えば、これによって岬そのものを天然の防波堤にしたのである。落石の恐れがあるのであまり近寄れないのだが、内海側からトンネルの中を覗くこともできる。暗い洞窟のような空間の先に海を見るのは、太古の海人になったような奇妙に心を揺さぶられるシーンだった。

石崎漁港のトンネルは長さ45メートル、1934年の完成という。当時の北海道庁の港湾課長の設計による。いったいどうやって掘ったのだろう、土砂は船で運んだのだろうが、大変だったことだろうなどと、想像をたくましくする。

今も息づく技術者の情熱

上ノ国町のホームページには、このトンネルが使われていた当時のモノクロ写真も掲載されている。これを見ると、港は岬の先端から続く防波堤に囲まれ、完全に外海から守られている。海に生きる人々にとって、これほど安心なことはなかったろう。古びたコンクリートには、荒海から人々の生活を守ろうとした技術者の情熱が、まだ息づいているようだ。

地元でもらったパンフレットによると、石崎漁港はサケ釣りのシーズンには「釣り堀状態」になると書いてある。この光景を見ながらサケを釣るのも、楽しいに違いない。

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