諸事情を飲み込んで

男山酒造の「諸事情」。very dryです。 私が愛したお酒たち
男山酒造の「諸事情」。very dryです。

メンツにこだわって失敗

コロナ禍は拡大の一途だ。松の内が明けた1月8日から、東京を中心とした一都三県は緊急事態宣言となった。私も年明けからお屠蘇気分ではない(そもそも好きではないが)。関西三府県でも1月13日に出されるらしい。北海道は今月15日までの予定だった「集中対策期間」を延期すると報じられている。なぜ、いちいち日付を書くかというと、将来、この現状を振り返った時のためだ。それにしても、なぜこうも遅いのか。そして、なぜ全国一律に緊急事態を宣言しないのだろうか。

理由はおおよそ見当が付く。二度目の全国一律緊急事態宣言となれば、明らかに「対策の失敗」だからだ。政府としては、「これまでの対策は効果を上げているが、状況が悪化した地域があるので、その地域を限定して宣言した」という体裁をとりたい。いや、もちろん、政府の対策はほとんど失敗している。自治体レベルでは、和歌山県や世田谷区のように、pcr検査や抗体検査の取り組みで成果を挙げているところもある。が、それを認めては、政府のメンツが立たない。政府は失敗したが、独自の対策をした自治体は成功したとなれば、ますますメンツがつぶれる。

酒に肴を合わせてみよ

時にはメンツを捨てることも大切だ。そう思ったきっかけは、年初に普段行かないスーパーでお酒コーナーを見たこと。男山酒造の「諸事情」が800円弱で売られていた。昨年の新聞記事で知ったのだが、コロナでアメリカに輸出できなくなった純米酒が大量に余り、それを「諸事情」と名付けて格安で売り出したのだ。表のラベルはなく、裏面の製品情報にそのあたりの事情が書かれている。それにしても安い。私はつい買ってしまった。本当は母の故郷である宮城の「浦霞」の予定だったのだが。

さて、この諸事情、実に辛口である。冷やして、だし巻き卵やタコの刺身とともに飲んだが、やはり浦霞にすべきだったかなと思う。燗をつけると、香りが立って少しはいい。しかし、どうも艶というか遊び心というか、面白みに欠ける。せめてもう少し爽やかな軽さがあれば、などと超辛口の評価をしてしまった。ところが数日後、カキフライで飲んでみると、どうだろう。驚くべきことに、きりりとうまい酒に感じるではないか。アメリカの食事は脂っぽいから、こうした酒が合うのだろう、と妙に納得したものだ。馬には乗ってみよ、酒には肴を合わせてみよ、である。メンツを捨てて、評価されることもある。男山、見直しました。私もこの一年、少しは潔く生きたい。

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