王禄飲み比べ3種セットに酔う
最近、松江に行ってきた。十数年前に一度訪れたきりで、「また、あの松江城のお堀をのんびり船に揺られたい」「小泉八雲の旧居も見たい」と、思い立ったのである。今回は足立美術館、美保関にも足を延ばした。ただ、旅のすべてを書くのはあまりに長いので、今回は松江の居酒屋のお話。 「根っこや」という店がガイドブックにあり、なかなかの人気店らしいので、予約を入れて訪ねた。大橋川という川のたもとにあり、窓のそばの席なら川を見ながら飲めるようだ。もっとも案内されたのは奥のカウンターだったので、それはかなわなかったが、川を染める夕日は向かう途中で堪能できたので、良しとしよう。
この店、「王禄」という酒をメインに取り扱っており、色々な種類が飲める。初めて聞く名前であるが、そうなれば「王禄飲み比べ3種セット」にしよう。出てきたのは「超王禄」「丈経(たけみち)」「本日の王禄」。超王禄はすっきりとした辛口純米。食中酒としてなかなかよい。丈経というのは、杜氏さんの名前らしい。うまみと強さがある。本日の王禄は純米大吟醸酒。香りが華やかで、言うまでもなく上品かつうまい。いずれも堪能できた。
あのバーの名前は
料理は簡単なコースがあり、それを頼んだのだが、「ドギ」という魚を揚げたものが珍しい。スタッフの方によると、「深海魚です」とのこと。白身の柔らかい魚で、適度な脂がのっている。頭から食べられるとのことで、ばりばりと食べた。身の味は、シシャモとタラを足して二で割ったような(?)感じだろうか。見た目とは裏腹に、また食べたくなる魚である。いまネットで調べてみると、島根の地魚で、生の状態では「ゼラチン質いっぱいのぷるんぷるん」らしい。
王禄の次は、やはり松江の地酒「豊の秋」の純米吟醸。これはキレのいい酒だった。さらに「奥出雲ワイナリー」の「小公子」を一杯。これは渋みが少なく、優しい飲み口の赤ワイン。十数年前に来たときは、地酒もワインも飲まなかったのだろうか。まったく酒の記憶がない。ただ、「最近、始めたばかりです」という気のいい若者のバーで飲んだことだけは覚えている。あの店、今もあるのかどうか。名前を思い出せないので、確かめるすべはなかった。
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