面の皮は厚いが、肌は弱い
私は髭が似合わない。30年近く前、少し生やしてみたこともあるのだが、想像したような野性味はまったく備わらなかったため、すぐに諦めた。もともと中身に野性味がないのだから、オモテに現れようがないのである。だから、毎日、髭を剃る。剃らないと、ただでさえ見苦しいのに、さらに見苦しくなるからだ。もっとも、日曜など仕事をしない日は、剃りたくないと思う。面の皮は十分厚いのだが、なぜか剃刀負けしやすいのである。では、電気シェーバーはどうかというと、これはさらに肌を傷める気がする。したがって、かれこれ40年以上、剃刀を愛用している。
バブル(1990年前後)の頃ではないかと思うが、剃刀の刃の値段が俄然高くなった。当時読んだ雑誌で、髭剃りで有名なシックの日本法人の幹部が、「ホルダー(持ち手)は安く売り、その後継続して使う替刃を高く売って利益を上げる」と語っていた。実は、この戦略はシックのライバルが考案し、ジレット・モデルと呼ばれているらしい。言わば「人質戦略」である。最初の購買=人質として、以後、継続的に利益を上げる。プリンター本体を安く売り、インクを高く売るのも、この戦略の一例だ。電話機本体を安くして最初の契約を2年間縛る携帯電話なども同類に思える。
新たな人質に
話が長くなったが、私の髭剃りも長年ジレットの人質だった。40年前、2枚刃だったのが、今は5枚刃になっている。高品質化と高価格化もセットで進んだ。ところがホルダーの安売りが進み、ある時期から「ホルダー+替刃」のセットで買う方が、替刃だけ買うより安いという逆転現象が起き始め、さらにインクと同じく、替刃の安い互換品も出回るようになった。しかし、私は相変わらず、純正品の替刃だけを買うことが多かった。
というのは、刃を長持ちさせる我流の髭剃り法(?)が完成の域に達し、1年間で5つの替刃があれば十分になったのである。詳しく書くほどのことでもないが、1.替刃を毎日ローテーションする 2.髭剃り前に顔にコールドクリーム(安い「ちふれ」を愛用)を塗り、その上に泡立てたせっけんを塗る 3.剃る前に剃刀の刃にヒアロルン酸液を擦り付ける という3ステップでいい。剃る前にできるだけ肌と刃を滑らかにするのがポイントだ。髭剃り後は何もつけない。これで毎朝すっきり、しっとりである。ところが先日、来年用にと替刃を買いにホームセンターに行くと、貝印がシックやジレットに対抗する商品を出しているではないか。それも「ホルダー+替刃8個付き」で、4個付きのジレットより安いのだ。私は来年から、貝印の人質になることにした。
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