ムール貝の饗宴

本日の一品

明日は我が身

ある祝日のことだった。私は気分が沈んでしまい、何をする気力も湧かなかった。立て続けに襲ってきた台風の被害を、テレビやネットで見すぎたせいかもしれない。わが社会はかくも無力なのかと、ちょっと絶望的な気分だった。「経験したことのない規模の台風が来る」ことが、2日も前からわかっていながら、「避難してください」「生命を守る手段をとってください」というメッセージしかないのは、どうかしているのではないか? 電車の計画運休ができるなら、住民の計画避難も、ダムの計画放流もできたのではないか? 

そんな疑問が頭の中をぐるぐる回り、「でも、誰がそれを指揮し、実行するのかが決まっていないのかもしれない。首相はラグビーを見ていたらしいし」と気づいた。しかし、その怠慢を許していたら、これからも台風のコースという自然の運不運に、この国は翻弄され続けるしかないではないか。これでは誰もが「明日は我が身」とおびえることしかできない。災害に対する政府や自治体の対応が、準備段階からかなり後手に回っているのに、それを反省する気もないようだ。

ムール貝とワインと課題図書

午後3時過ぎ、私は師匠に電話をした。「やる気がまったく出ません。師匠、仕事場ですか」と。「ああ、いいよ。おいでよ」と、気軽に返事をしてくれた。やはり師匠というのは、ありがたいものである。私は赤ワインとビールを買って、4時半に師匠の事務所を訪ねた。師匠は近くのスーパーから帰ってきたところで、「一品、作ろうかと思って」と言う。まずは景気づけに、ストレートでウィスキーをくいっと一杯。師匠のお気に入りは「ティーチャーズ」である。

不肖の弟子はビールを飲みつつ、料理の出来上がりを待つ。今日は「蒸したムール貝 サラダ仕立て」(勝手に命名)である。ニンニクの利いたソースがかかり、ミニトマト、ベビーリーフなどが彩りを添える。ムール貝も貝殻付きとむき身の両方を入れ、インパクトも十分だ。これを肴に、赤ワイン、白ワインを1本ずつ開け、気づいたら9時を少し回っていた。5時間飲んだことになる。お互い最近読んだ本の話をし、社会の行く末に思いをいたし、久しぶりに知的刺激をいただいた。50年前の大学生同士の会話みたいでもあるが。その時に師匠が最近読み、面白かった本がこれ。700ページ近い大著である。私の課題図書である。師匠、おかげで少し、やる気が出てきました。

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