勝さんロス

酒場物語

勝のやきとり、最後の夜

昨日の12月20日は、ススキノの「勝のやきとり」最後の日。今週はせめて2回行きたかったのだが、仕事に追われて結局、最終日にしか行けなかった。7時に店をのぞくと、カウンターのみ8人のベンチは満席。「じゃあ、またあとで来ます」と言って、狸小路の某店へ。ところがここも満席で入れない。では、と次の候補の店へ行ったが、やはり満席だった。まあ、一年で一番忘年会が集中する日だから、当然だ。

ということで、某ビアバーへ。カウンターで飲んでいると、携帯が鳴り、師匠から「どこにいる?」と電話。やはり、座れなかったらしい。とりあえず来ていただき、二人でビール。それからまた、ススキノを放浪し、ある居酒屋で日本酒を飲んだ後、ようやく勝さんへ。8時半くらいだったろうか。勝さんの奥様もカウンターの中で、かいがいしく働いている。そのせいか、勝さんはいつもより少し表情がまじめだ。

最後までキャラを貫く

と思ったら、そこに23歳の美女が現れた。勝さん、とたんに全開モードである。彼女は上司とともに何度か来ているのだが、勝さんは彼女の名前が覚えられない。仮にアイコさんとしておくと、その名前を小さくメモって「よし、アイコ握手しよう」と、何度も手を差し出す。そのたびにアイコさんも、手を握る。優しい人なのである。で、数分すると、勝さん、またメモを見て、「アイコ、握手しよう」。ウーム、勝さん、隣に奥さんがいても、最後まで美女好きのキャラを貫いている。これぞ、プロだ。

もう何を話したか、思い出せない。たぶん、映画や女優、読んだ本、日本の未来…つまり、いつものこの酒場での会話だ。ただ、お客の中の誰かが「勝さんロスになっていない?」と言ったことだけは、しかと記憶に残っている。そう、私は先月から、時々何の理由もなく、気分が落ち込むことがあった。「あらかじめ失われた恋人たちよ」というタイトルの映画が昔あったけれど、「あらかじめ失われた勝のやきとり」状態だったのだ。でも、これからも、きっと勝さんと飲める。店は居ぬきで継ぐ人がいるそうだから、ひょっとしたら今度はベンチに座った勝さんがにこっと笑って、「おや、いらっしゃい」なんて、声をかけてくれる晩があるのではないか。そんな夢を見ている。

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