消しゴムの賢い使い方(ススキノ・勝のやきとり)

酒場物語

先日、師匠とススキノで飲んだ。その場で私より数歳年上のKさんを紹介され、三人で盛り上がったのが、私が高校生だった40年前のこの話。

私は公立中学校から私立の男子高校に進んだ。1クラスに50人、ニキビ面の若者というか馬鹿者たちがいるのだから、先生もきっと苦労が絶えなかったに違いない。もっとも勉強家も多かったので、授業中は静かで、よく眠れた。

ある日、一人の教師がこんなことを言った。「〇〇高校、××高校、△△高校、この三つは御三家と言われ、一流だ。では、うちはどうか。1.5流である。なぜなら、教師は一流だが、生徒は二流だからだ」

この時、私たち生徒は一斉に「ふざけんなー」と言いながら、消しゴムのきれっばしを黒板に投げた(もちろん、先生に当たらぬように、だ)。この類の話はどうやらわが校伝統の持ちネタらしく、こういう場合に備えて(?)、私たちは日ごろからカッターで消しゴムを刻んでいたのである。本当に馬鹿である。

Kさんは、しみじみと「いい話だなあ」と笑ってくれた。もちろん私にとっても、高校での懐かしい1コマだ。ところで、私はその後ある国立大学に進んだのだが、1年生の5月ごろ、文学部の教授(当時は学部の教授も、1つくらい教養部で授業を持つことがあった)が、授業中に「(勉強しない)君たちは、やはり共通一次世代なのだな」と言ったことがある。

もちろん、この時も私は消しゴムを握りしめていた。「俺たちが作った試験制度じゃないぞ。あんたたちが作った制度だろう」と。だが、クラスメートは誰一人として投げようとしなかった。そもそも消しゴムを手にしていなかったようだ。残念ながら、言い返すことも、投げることもなかったのである(こういうことは、一斉にやらないとダメなのだ)。

この国は総理大臣の街頭演説にヤジを飛ばしただけで、警察に取り囲まれ、身体の自由を奪われる異常な国になってしまった。もし消しゴムを投げたら、きっと逮捕されてしまうに違いない。

コメント

  1. 半田敦史 より:

    伊藤哲也君ですね
    桐朋高校同期の半田敦史です 
    この話覚えています

    • 今夜も男酒 今夜も男酒 より:

      伊藤哲也です。半田君、ご連絡ありがとう。うれしい! 

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