59歳にしか見えません

日本酒は上喜元の大吟醸be after。厚い揚げ焼きで 日々のかけら
ある日の晩酌。日本酒は上喜元の大吟醸be after。厚い揚げ焼きで

でも、どこかいいところが…

人生には、「ついうっかり、失礼なことを言ってしまった」ということが、たまに起きる。私自身の過去を振り返ってみても、苦い思い出がある。たとえば10年ほど前、もう50歳に近くなってからであったが、知り合ってそう長くないある男性の友人(少し年上だった)が、自分の奥さんのことを少し謙遜したので、「でも、どこかいいところがあったので、結婚されたのですよね?」などと、つい口走ってしまった。今思い出しても、その失礼さ加減に赤面する。

ひと月ほど前のことである。私は師匠を含めて十数人で、札幌近郊のある町へ1日バスツアーに出かけた。その町での仕事があり、町内各所を巡検する必要があったのだ。町在住の方にツアコンをお願いし、住宅地や学校、史跡などさまざまな場所を巡ったのだが、その1つに郷土資料館があった。その受付に年配の女性がおり、師匠が何かを話しかけていた。

話芸は夜磨かれる

実は師匠、40年前にこの町である仕事をしており、その時に当時20歳の女性をモデルになってもらったらしい。その作品を見たのだが、健康的な美人である。その女性が今どうしているのか、師匠は老婆心(老爺心?)ながら、気になっていたようだ。そこで、その受付の女性に、モデルさんが登場している印刷物を見せて、こう聞いた。「突然ですが、この女性をご存じではありませんか。当時20歳だったんですが、もう40年前のことだから、いい婆さんになっていると思いますが」

すると、その女性が懐かしそうな声で、「まあ、●●ちゃんじゃない! 私の同級生だったのよ」。まずいと思った師匠、次のセリフがこうだ。「これは失礼しました。あなたはどう見ても59歳にしか見えません」。亀の甲より年の功。こういう反射神経と言うか、切り抜け方と言うか、返し技のキレ味は実に見事である。相手の女性も笑っていた(ちなみにモデルの女性は、地元の方と結婚し、今もその町内に住んでいるそうだ)。その晩、私は師匠と二人でツアーの反省会をした。ススキノのおでん屋(いつもの「柳」)で女将に話し、合流してきた友人二人に別々に話し、さらに別の酒場(いつもの「ぼんてん」)で話したので、都合4回しゃべったと思う。途中から私が経緯を話して、オチだけ師匠が言うスタイルに変化したのだが、師匠の話芸はこうしてさらに磨かれていくのであった。

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